売上が低迷したり、競合が激しくなると商品(サービス)の値下げ(ディスカウント)が行われる事があります。これはリアルな実店舗でもインターネット上のネットショップでも良く見かけます。この手法は正しいやり方なのでしょうか。私は個人的に余程の理由が無い限り、この値下げによる売上確保の方法は良い結果が生まれないと思っています。
●価格競争は体力勝負であるという事
値下げをすると、一時的に売上は上がります。同じ商品(サービス)が、それまでの価格から割安で買えるわけですから、当然と言えば当然です。一方で価格を下げる、割り引くという事は、利益を失う事と同じですから、その分を販売量で補うという戦略になるわけです。しかし、一端この戦略を取ると、同様の商品やサービスを扱う競合会社の存在もあるわけですから、業界内で値下げ合戦が始まったりします。一時的に売上が上がり効果があったかと思われても、これが繰り返されると結局自分たちで自分たちの首を絞めあう消耗戦となります。こうなると売上は確保できても、ほとんど利益を生まないビジネスとなります。そして消耗戦は体力勝負となり、最後は生産能力が高かったり仕入れ能力が高い大手の企業が勝つ事になります。この事はインターネット上のネットショップで中小の企業の多くが経験していると思われます。
●値下げ戦略は商品(サービス)価値を間違いなく下げる
値下げは一時的な売上拡大になると思いますが、それは同時にその商品価値とブランドイメージを損なうものだと思います。同じ商品がそれまで買えてた価格の7割とか8割で手に入れば、消費者はどう思うでしょうか…。安く手に入るから嬉しいと思う側面「えっ?それだけの価値だったの?」「随分今迄儲かっていたんだ…」「今迄高いモノを買わされていたんだ」と思われないでしょうか。また一端値下げしてしまうともう一度値上げ局面になった時、定着した安モノイメージは取り返しが難しく、顧客は付いてきませんから値上げは相当困難になります。値下げにより一端定着してしまったイメージを払拭するには、値下げに要した以上のパワーが必要となります。この事は、マクドナルドや吉野家の例を見れば判りやすいかもしれません。
●値下げは顧客の質まで下げてしまう
自社商品やサービスに付いている顧客は、言わば財産です。値下げ戦略は、その顧客までも変えてしまうリスクを負っています。値下げは顧客も一時的に増えますから売上拡大になるかもしれません。しかし値下げによって増えた顧客は、固定客にはなりづらいと思います。なぜなら安い価格で増えた顧客は、別の安い所を見つけて簡単に移ってしまうからです。
●価格を下げず価値を高める
結局、価格が高いから売れない、競合の価格競争が激しいから売れないという理由で、安易な値下げをするというのは、あまりにも短絡的だと思うのです。それよりも目先の「売上を上げる」事から「利益を上げる」事へ発想の転換を図る事が重要かと思います。その為には、価格を下げず、価値を高める(価値に見合った価格が前提)事が大切です。その上で、その価値を評価する人、その価値を認めてくれる人、その価値を探す人を対象としたマーケティングが必要だと考えます。
2016/11/16加筆
上記に書いたマクドナルドや吉野家以外にも、かつてリンガーハットが一時業績悪化した要因は、『クーポンなどを活用した「値下げによる集客」に走った事』だと社長に再登板した創業者の米濱氏が認めています。リンガーハットのこの記事は関連性も高く興味ある所です。
直近では、ミスタードーナツが値下げに踏み切りCMなど広告展開を行っています。この成り行きにも興味ある所です。
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(written by スケールフリーネットワーク)